東京高判令和元年12月11日(TPR事件)速報

大方の予想通り、東京高裁でも納税者が敗訴しました。

節税目的が主目的であると疑われるような会議資料があっただけでなく、東京地裁において、節税をまったく考慮していないといった主張を納税者がしていた時点で、正直、納税者の勝ち目はないと思っていました。

そうは言っても、「完全支配関係内の合併でも事業単位の移転が必要である」といった理論構成くらいは崩せると思ったのですが、T&Amaster816号を見る限り、それすらも覆せなかったようです。

プロフェッションジャーナル340号~342号で掲載したように、「完全支配関係内の合併でも事業単位の移転が必要である」という理論構成は、平成22年度税制改正とはまったく整合しません。この主張を納税者がしなかった理由としては、平成22年度税制改正前の事件であることから、そのような主張に意味がないという判断をしたからであると思われます。

そうなると、平成22年度税制改正後の事件において、TPR事件をどのように考えるのかという点が問題となります。T&Amaster816号では、組織再編税制の立案担当者が事業の継続が必要であるという説明をしていたと東京高裁が認定していますが、この場合の組織再編税制の立案担当者は朝長英樹氏のことであると思われます。

そして、プロフェッションジャーナル342号で掲載したように、朝長英樹氏は『現代税制の現状と課題(組織再編成税制編)』(新日本法規)において、平成22年度税制改正、平成29年度税制改正を批判されていますが、これを読むと、平成22年度税制改正以降の改正が、完全支配関係内の組織再編において事業単位の移転が必要であるという前提を覆したことがわかります。

このことからも、平成13年当時であればともかくとして、現在の財務省主税局が完全支配関係内の組織再編において事業単位の移転が必要であるとは考えていないことがわかります。

それでは、平成22年度税制改正後は、TPR事件をどこまで参考にしてよいのかという点が問題になります。現在の財務省主税局が完全支配関係内の組織再編において事業単位の移転が必要であるとは考えていないからといって、とりあえず国税局はTPR事件を前提に税務調査をしてくるので、納税者サイドとしては、完全支配関係内の組織再編において事業単位の移転が必要であると国税局が考えているという前提で税務調査に対応する必要があります。

この点については、ユニバーサルミュージック事件の東京高裁判決も含めた出版を予定しているので、2020年下旬から2021年上旬ごろの出版になると思いますが、現在、細かいケーススタディも含めて検討しているところです。

大雑把に言えば、

①残余財産の確定に伴う繰越欠損金が認められた平成22年度以降は、休眠会社との合併が法人税の負担を減少させた事実に該当するかどうか。

②100歩譲って完全支配関係内の合併でも事業単位の移転が必要だったとしても、事業目的が主目的であれば否認されないことになっている。それでは、実務上、どのように対応すべきなのか

③事業や資産を兄弟会社に移転した後に清算した場合には、同族会社等の行為計算の否認が適用されるリスクがあるのか。

こういったところを検討しています。まずは、TPR事件の東京高裁判決が公表された段階で、改めて情報提供をしたいと考えています。